昨年の4月は、売る上げゼロ、5月に入り手探り状態で、私と鈴木先生の2人で、治療所を守るということで、他のスタッフには自宅待機命令を出しました。微々たる政府からの従業員のための援助に頭を下げてのスタートでした。
昨年の夏は、誠に不気味な光景として、印象に残っているのは、平日の真っ昼間、道路に1台の車も通らない現実、そして車一台、通らない道路の横断歩道を買い物かごを下げて闊歩する一人の中年のおばさん。何しろ異常な光景が、氾濫していました。
現実に隣近所のおじさんおばさんが、感染して病院にも行けずに自宅待機療養の中、死亡するという現実を、目の当たりにしての仕事復帰で、心臓を手術している身にとっては、誠にフェースシールドとマスクだけの防備での患者さんとの接触は、ちょっとやばいんじゃないかとビビったことも確かでした。
ただ治療に入ると長年の仕事ですので、時間を忘れて、わざわざこんな時に、来ていただいた昔からの患者さんを、丁寧に施術したのを覚えています。ただ、人間、慣れと腹を据えれば、その時、あの時、今考えれば、火事場の糞力、結構いけちゃうんですね。無我の境地は,大横綱だけの言葉ではなく、私たちにも共通する言葉ということが、理解できました。
人間の運命、何があっても、神様が、まだ死なせてくれなければ、生きぬくということで、あっという間に、交通事故で逝っちゃったグラナダのアントニオ先生。誠に持って考えさせられました。
アントニオ先生は、グラナダの公立の学校の体育の先生で、40歳からちょっとした縁で、指圧の世界に入り、グラナダに学校と治療所を経営し始めたのが、15年前、順調そのもので、二股かけての生活はきついので,公立の学校を早期退職して指圧一本で、やりだした、なかなかのグラナダ魂を持った先生なのでした。65歳になり、余生は、キャンピングカーでヨーロッパをうろうろしたいということで、指圧学校を封鎖して、治療所の仕事も3日間程度にして、優雅に生きようと思った矢先に、高速道路で自爆(道路わきに出てしまって壁に激突)していってしまったのでした。毎日使用する家と治療所のほんの数キロ間の高速道路の出来事でした。
人生とは、そんなものかとつくづく考えさせられる出来事でした。こんなこともあり、苦を惜しまずに毎日目一杯生きることが大事と達観した次第です。
昨年の夏以降、患者さんは、ほとんどなしの状態でしたが、この間、暇なもんで、1冊、本を製作しちゃおうということで、夏ごろから初めて今年の春にスペイン語版で阿是指圧基礎編を出版しました。
このパンデミックもなんやかんやで1年半、今は、予防注射もスペイン国民の40パーセント普及ということで、どうにか目途が立ちだしました。いかんせん私たちの商売は、医療界の中にはありますが、予防医学の分野です。
一刻を争う医者本来の命のやり取りの分野ではありません。私たち指圧師の仕事は、衣食足りて健康を顧みる体に投資の医療です。腰痛で死ぬ人はいません。このことから言えば、まだまだフル活動は、無理のようです。トントン上等。赤字は、オーナーの太っ腹と我慢が、どこまで続くかにかかっているのが実際の現状なのでした。この状況は、今年いっぱい続くだろうと予測しています。
ただスペインは、妙に明るく観光客を引っ張り込もうと無理にスマイルしているとはいえ、いざとなれば、開き直る人種ですので、日本よりは復興は早いかもしれません。この1年はまだまだの不安は、的中しそうです。
逆に日本は、妙に意気込んでいるけど、大将菅に運気がないので、私は、この夏はパニック状態とみています。オリンピック開催が、吉と出るか凶と出るか、私は、長い目で見た日本の未来感としては、凶とみています。
1年半、私的なことは、すべて活動中止でしたが、声を聴きたい本当の友は、誰かがわかりました。1年半たって顔のイメージが浮かばない輩。そして短い人生、何が必要で、何がいらないということも、わかりかけました。
街中でスマートフォンで話す輩の何人が、本当に必要な会話をしているのでしょうか。私たちの会話に緊張感がなくなり、暇な時間の解消策にスマートフォンを使用しているおめでたさんが、目立ちます。友達という妙にくすぐったい存在も、本当は、5本の指に収まればOK、上等じゃないかと思います。
こんな機会だからこそ見えることがいっぱいあります。実に今回は、勉強せていただきました。それにしても患者さんが少ないなー。