指圧の根底

| 4 Comments

2000年の夏、私のスタッフの一人であったJAUN DE DIOS 先生が、夏休みを利用して家族サービスをしたいと言うことで、彼にMALAGA(マラガ)のCOSTA DEL SOL(コスタデルソル太陽の海岸)にある、おんぼろアパートを貸してあげました。
 金曜日の夕方までうちの治療所で患者さんを取り、早々に帰宅して夜の12時に出発してマドリッドからマラガの550kmの走行距離を約5時間で完走、これがJUAN一家の計画でした。彼は、夏は、臨時の森林消防員、土曜、日曜は、柔術の先生、普段は、私の治療院で指圧師として働き、リーダーとしての頭も十分で私の右腕的存在でした。
 今まで何年も夏休みも取らずに精力的に働いている彼に俺と同じことをやっていたら、離婚だよと脅しをかけました。JUANの嫁さんは、スペイン人だよと散々諭して取らせた夏休みでした。(ちなみに旦那がスペイン人、嫁さんが日本人の場合は、結構持ってる(我慢している)みたいですが、旦那が日本人、嫁さんがスペイン人のケースは、離婚が圧倒的に多いみたいです。スペイン人の嫁さんを週末ほっといたら、こりゃやばいですよ、何しろ我儘の女の子がはびこっていますから。うちの息子はスペイン人の恋人と長年付き合っていますが、奴隷ですね。)
 日曜日の遅い朝食を終わらせ到着CALLがないなーと思っていると昼の12時ごろ、うちの学生でマラガの病院で働いている看護婦のマリアから連絡が入りました。なんだなんだの悪い予感、ヘリコプターでマラガから50km離れた海岸からJUAN が搬送されたとの連絡が入りました。今集中治療室にいる生死は5分5分と言うことでした。何が何だか解らずに、列車の時刻表とにらめっこしてとりあえずマラガまでスタッフと吹っ飛んで行ったのでした。
 奥さんの話を聞いてみると朝の7時にアパートに到着してBARで朝食を取り、子供にせかされて海岸に出て行ったそうです。たまたま日曜日、海岸では小さなお祭りをやっていてその中の一つに子供用のトランポリンが並んでいました。そのトランポリンを子供と一緒に遊ぶことになりました。一台一台用意されて別々に乗り、子供用なので、ばねが緩いと思い、力強く飛び跳ねたようです。運動神経抜群の彼です。かっこよいところを見せたかったのでしょう。しかし着地が足からではなく頭からだったそうです。まっすぐに着地すれば、頭からでも冗談着地の笑い話で済んだのでしょうが、運悪く、角度が若干斜めだったらしいのです。そのわずかの角度の違いが大事故の境目でした。
 魔が差したのでしょう。頚椎捻挫ならまだしも、頚椎の脊髄切断という大事故になってしまいました。結果的に言えば、意識の回復は果たしましたが、首から下は、まったくの麻痺した状態になりました。マラガの病院からTLEDO(トレド)の交通事故専門の病院に搬送されて2か月ほど入院したのちに自宅に帰ってきました。それから彼は、車いすの生活を続けるようになりました。下半身だけの麻痺ならCPもスマートフォンも使用できるし,食事において食べること自体の苦労もなくて済みます。しかしご想像ください、首から下が麻痺した状態を。ほっとかれたら三日もすれば死んでしまう状態です。その事故を境に天国にいた人間が、真ッ逆さまに地獄に落とされたのです。
 ちょうどそのころスペインの北で、まったく彼と同じ状態の人が安楽死を認めてくれと裁判中でした。その人が何者かの協力を得てあの世に行ったというニュースがスペインに流れて話題を提供していた時でした。
その彼とは、年に何回ですが、彼の家まで行って数時間を過ごします。取り留めもない」話をします。初めのころは月に一回は行っていたものが、今では、数回になりました。情けないと思います。忙しいことを言い訳に電話をすることも少なくなりました。それでもいつも気になって大会があると出てこいと誘います。卒業式があると出てこいと誘います。腎臓を一つとり、胆石の手術もして、徐々に抵抗力も減退しているのでしょうが、頑張っています。彼は何も言いません。
こんな時にいつも思うことは、今しかない。今を生きろのスローガンです。やさしくなりすぎると自分の生を食われてしまうのですが、優しくなれなければこの仕事をまっとうはできないのも事実です。SHIATSUは手当てが仕事です。生き物との一対一の仕事です。効率は悪いけどまったく飽きない仕事です。この辺まで来るとこの仕事も妙に楽しくなります。いろいろある道です。

4 Comments

  1.  今年度、横浜市立盲特別支援学校の「理療臨床公開講座」の講義に、1日3時間10日間
    云って来ました。全員視覚障害者です。
     
    先生のお気持ちが、良く分かります。
                            木下誠

    • 指圧は人間という生き物が相手ですので、コンピューター相手の稼業とは違った醍醐味がありますね。おもしろい仕事ですが、入り込みすぎて、夢中になって心筋梗塞で逝っちゃう指圧師もたまにいますね。脂がのりきった先生です。ご自愛ください。

  2. 自分も、人が好きで、人と関わる仕事が好きです
    人との関わりで、自分が成長すると思っています

    • ヤハリ指圧をやっている人達は、直接触れてコムニケーショんを取ることがすきなんだと思います。いい商売ですよ。

おのだしげる にコメントする コメントをキャンセル

Required fields are marked *.