ドイツとスイスの指圧はどうですか。実力はどうですかねー、と聞かれたら私は何と答えたらいいのでしょう。例えばですね、あなたが週一回、日本でどっかのおっさんに指圧を受けているとします。まーレベルはそこそこ疲れ位は取れるでしょう。そんな人がヨーロッパに旅行に来て、時差ボケで眠れない、疲れが古傷を呼び起こして腰痛の前触れです。やばいと地元のガイドさんにマッサージ受けたいんですけどと頼みます。来ました、自称指圧師が。仰臥で腹を触診し始めました。掌でなんかやりだしたぞー。これで今日は眠れるかもしれない。終わったらチップあげちゃおうかな、なんて思ったりして。10分すぎて腹の指圧が延々と続きます。掌圧でぐっとぐっともたれた腸がほぐれて来たかな。いな10分間鳩尾周辺を触っているだけなのです。じーっと触っているだけなのです。どうですか、なんて聞いてきました。気が動き出しましたよ。なんていい始めました。俺は、うー気が動きだしエネルギーが奥から湧き出してきました。と答えれば友好関係にひびが入らないのだろうか。それとも気はいいから、圧してください。こってる所を見つけてバンバンぎゅうぎゅう揉んでくださいと。言うべきなんだろうか。
背中も然り、ただ触るだけ。蝉が止まってみーみー鳴いてる感じで施術の終了。それで7000円ですと言われたら私は切れてしまうのでしょうか。これがヨーロッパの指圧ですと言ったら笑う前に戦犯を探したくなりますね。ヨーロッパ人は気が好きなのです。気を語り詐欺寸前の輩がいっぱいいます。日本人もこの手を教えるおっさんおばさんがよくヨーロッパに来ます。指圧は気の動きを見ます。気の停滞部分を探してその部分の濁った気を排除して新しい気に入れ替えるのです。なんて言われたら私はどう答えたらよいのでしょうか。ドイツ、スイスはこんな感じでした。日本指圧専門学校の指圧実技教員生活40年の小林先生はあきれを通り越して思わず凍ってしまいました。誰がこんな指圧を伝えたんでしょう。ヨーロッパの指圧は40年の歴史があると言われているのに、この有様です。指圧の文字が独り歩きしているのです。
40何年前、増永静人という伝説の先生が海外で指圧を普及させようと思い、ニューヨークの日本人に協力を仰いだらしいのです。そのころその人は、マッサージをサウナでやっていたらしいのですが、その辺は全くの謎なのです。そうこうしているうちに増永先生はがんを患い57歳でお亡くなりました。そのあとにお手伝いした日本人が禅指圧という名で増永先生の執筆した本をDR増永、DRだれだれの共著で世に指圧(禅指圧)の本を送り出してヨーロッパに広がったのがヨーロッパの指圧なのです。その幻の本を私は、今回ドイツの講習で主催者の学校の本棚で見つけました。本当に共同執筆だったんだと改めて事実を目の当たりにしました。もちろん100パーセント増永先生の本なのにやりましたね。こんな人がひろめた指圧がヨーロッパの原点なのです。実際親指で圧する施術を小林先生がDemoしたら親指と親指を重ねて圧する重ね母指圧を見て、10年指圧をやっているけどその押し方は初めてだと素直な感想を漏らした参加者がいました。
浪越の基本操作さえも知らない10年選手がウジャウジャののヨーロッパなのです。どっから手を付けたらいいんでしょうか。タンゴと言って教えて実は炭鉱節の振り付けを高い金を払って教わっていたのです。これはもう犯罪です。外国にいる日本の指圧師ならだれもが知っているあの某氏が仕掛け人です。戦犯はあの人なのです。痛みを取ることが指圧師の使命と息がっている私にとっては、なんと悲しい真実でしょう。でもあのころの日本人は生きるために精いっぱいだったのです。軌道修正は必要ですが、後ろは振り返らない。私は、私の指圧を教えます。一一気にかけていたら早死にしちゃうぞー。患者さんがgoodならなんだっていいんだと言い聞かせよう。